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宇宙の果てはどうなっているのか?

上巻 p.23 本編
著者:72k T.

人間が宇宙に進出してからまだ半世紀ぐらいなわけですが,理論的に確立された人々の宇宙観というのは,もうちょっと前からあったみたいです.

人類は,宇宙飛行士を宇宙に送ったこともありますが,人間が行けないような遠い場所や未知の場所には,探査機を送ったこともあります.それらの探査機は,主に太陽系内部の遠い惑星や衛星,彗星などを観測しているのです.(ちなみに太陽の表面を観察するために太陽のすぐ近くを公転している探査機もあるみたいです)

ところで,先日,物理の授業でこんな問題があったんですね.


地球から探査機を打ち上げる.宇宙の果てまで飛ばすためには,地球表面で初速がいくらあれば良いか? ただし,地球以外の天体の重力による影響は考慮せず,地球を出発した後はこの探査機に力が加わらないものとする.



確かに古典力学の範疇では,一定以上の初速度があれば,宇宙の彼方まで飛び去ることが可能です. しかしこの話は,以下の点で非現実的ともいえます.

とは言っても,ある程度の初速度があるだけで宇宙の彼方まで飛べることは,感動に値するように思います.

宇宙の果てまで飛ぶには?

まずとりあえず,必要な初速度を計算してみましょう.

ここで用いる考え方が,「力学的エネルギー」というものになります.力学的エネルギーとは,運動している物体が保有する「運動エネルギー」,高い場所にある物体が持っている「位置エネルギー」などがありますが,ここでは,地球から出発するときの「運動エネルギー」と,無限遠での「位置エネルギー」を考え,結果必要な初速度は「第ニ宇宙速度」と呼ばれ,11.2km/s程度となります.(実際には太陽系の重力圏からも脱出するにはもうちょっと初速が必要です.これは「第三宇宙速度」と呼ばれ,16.7km/s程度のようです.)

現実的な課題

実際には,宇宙の端に行くことはできないでしょう.というのも,宇宙の端まで「ある一定のエネルギーを掛ければ行ける」けれども,「時間は(ほぼ)無限にかかる」からです.しかも,時間が無限なら,エネルギーの減衰も考慮に入れる必要があります.

そんなこと言っても,おもんないやろ,と,今隣にいる某部員が言うてたので,「もし宇宙の果てに行けたら」と言う話を続けましょう.

宇宙の端?

それが何か考える前に,「そもそも宇宙の端なんてあるのか?」と言うところから考える必要があるでしょう.

まずは,「観測可能な宇宙の果て」について,これは光の最大の速さが秒速30万キロ程度であることに基づいています.単純に「宇宙が138億年前に出来た」ことから考えると,観測可能な宇宙の果ては138億光年先までということになります.ただし実際には,宇宙は膨脹し続けているので,そのぶんを考慮して465億光年先まで観測可能という説が有力です.

ここで触れた「観測可能な宇宙の果て」に関しては,もし仮にこれを超えたとしても,宇宙が途切れていたりするわけではなく,この先にも宇宙が広がっているということです.

でもそれは単に「観測できるかどうか」で分けただけです.では,「真の宇宙の果て」はどうなっているのでしょうか.

説① 無限宇宙説(Perfumeの曲ではありません)

最も有力であるようです.宇宙はどこまでも果てしなく続いている…?

ところでこの説によると,「宇宙の体積は無限大」「宇宙は空間的に平坦」であると言われますが,近年は空間的には微妙に曲がっている可能性も指摘されています.

説② 閉じた球面

宇宙は有限だが,端と端は繋がっているので、ぶつかるような端っこは無いっていう説です.ドーナツ型に例えられることがあります.

ざっくりいうと,地球の地面は球面なので端がない,というのと同じような感じです.

説③ 壁・境界がある

ちょい少数派みたいです.

宇宙には物理的な「壁」みたいなんがあって,その向こうには空間が存在しないって考え方です.

しかしこの説では,「宇宙の端に行けば行くほど空間そのものが歪んでいるため,例の壁には永久に到達できないように思われる」という見方が有力です.

ちなみに僕はこの説を信じています.

説④ マルチバース

自分たちが今いるこの宇宙は一つの泡のようなもので,他の宇宙との境界が宇宙の果て,という考え方です.近年「多元宇宙論」などとして唱えられることが増えてきています.

端っこが他の宇宙と繋がっているように思われますが,この中では,他の宇宙とは干渉できないという説が有力であるようです.

この意味での宇宙は巨大な泡のように例えられ、「宇宙のバブル構造」と言われることがあります.

結局…

現在のところ,完全に証明することは難しいため,どれが正しいとは言えない状況ですが,およそ全てに共通しているのは,「観測できない範囲においても,観測できる範囲と同じような空間が続いていると推測される」ということ程度であり,光の速さでも永遠に辿り着けない領域が存在してしまうというのも残念なことです.

しかし,宇宙の端という概念は,宇宙の真の姿を考える上で,非常に重要な要素となることでしょう.